神戸調査隊記録

 

1990年春、老朽化した朝日会館の取り壊しとともに、あるバーが閉店しました。

コウベハイボール

その最後の日。
多くの常連客が別れを惜しみました。

コウベハイボール最後の日
朝日新聞の記事より

今も尚、そのグッドバーを懐かしむ声を多く聞きます。
あの時神戸にこんなものがあった!/コウベハイボール

一度も行くことのなかったコウベハイボールというバー。
だいたいバーなるものへ、行ったことがないのです。
コウベハイボールで河村さんが作られるハイボールを飲んでみたいと思いました。
そのコウベハイボールの残り香が感じられるバーが大阪北新地にあります。

80余年の歴史を誇るサンボアバーの新店。北新地サンボア

この北新地サンボアにコウベハイボールのバックバーがあります。

コウベハイボールの常連でいらしたまたのさんがサンボアを訪れて素敵なエッセイを書かれました。
想い出のコウベハイボール バックバーとの再会

コウベハイボールのバックバーがどうして北新地サンボアにあるのか、そのいきさつはやはりこのバーの常連さんであった成田一徹さんの「to the Bar」にも書かれています。

北新地サンボア。
ドアを押して入ると、なんだか静かな雰囲気。
清潔な店内。
先客は2名でした。

あ〜これがコウベハイボールのバックバー!
中央にコウベハイボールのマッチ。

 
撮影をお願いすると下に降ろしてくださいました。
静かな雰囲気、気後れがします。
しかし、コウベハイボールの話を切り出すと、気軽にファイルを取り出して見せてくださいました。

するとカウンターで飲んでおられた紳士はなんとコウベハイボールの常連さんだったようなのです。

ファイルの写真を見ながらいろんなお話をしてくださいました。


今はもう取り壊された旧朝日会館の入り口からスロープを下っていくとだんだん暗くなり、 そこにコウベハイボールの入り口があったこと。

ウェスタン映画にでてくるようにパァーンと押してはいる扉であったこと。

長いカウンター。
そしてマスターはその一番右側におられたという。

「若いカップルなどは苦手やったね。今日は混んでるから。」と混んでいなくても 入れてくれなかったり。
若いカップルは1杯で長くいるので、さっと1時間くらいできりあげるスタンディングバーに 似合わないのでしょうね。

静かなおとなの雰囲気のバー。
マスターの作るのはホワイトのハイボール。
「そしてカウンターにドン!とこう置くんですよ。」

アテはカレーのじゃがいものピクルス。
「もうこれが本当にうまい!本当にうまいんですよ。」

その方は大阪の方ですが、神戸に仕事で行かれたときによく寄られたそうです。
お店の方も一緒になっていろんなお話しをされました。
「コウベハイボールは場所柄、朝日の新聞記者さんが多かったそうですよ。」

街の片隅での静かな空間。
マスターと客との織り成す空気。
話を聞いて想像するばかりですが、わかる気がしました。
このサンボアも素敵でしたから。

お店の方がファイルの中からなんと、コウベハイボールの開店時の挨拶状を出されました。


開店御挨拶

この度 神戸サンボアを解消いたしましてハイボールスタンドを新設いたしました。
このハイボールスタンドとは現在デフレ下の世相を考慮いたしまして一杯サントリーハイボール100円の店であります。
その他のものも格安品を探し出しまして至極安値に召し上がっていただくのを主義といたし度いと存じて居ります。
あへてサンボアを名乗らぬことはサンボアの行く道は永遠にかえたくない為でございます。
右の次第よろしくご了解くださいまして御宜傳等御配慮に預り度いものとお願いする次第であります。

昭和29年 初冬

多くの方に惜しまれて閉店したコウベハイボール。

神戸にこんなお店があったのが、本当にうれしいです。
今もしっかりとその記憶が人々を結びつける
グッド・バー コウベハイボールに乾杯。
H18.6.6記

追記:コウベハイボールのことに関してはスガ様がとても詳しく素晴らしい記事をup されております。
私の好きだったバー

H18.7.2追記


1990年3月15日閉店

神戸調査隊記録へ