神戸調査隊記録

 - 地球深部探査船「ちきゅう」 -
掘削編--  

 
長さ:210m
総トン数:57,087トン
最大掘削深度:7,000m
乗員数:150名(乗組員100名、研究者50名)
全高(海面から):121m
全高(船底から):130m
喫水:9.2m
最大速力:12ノット
掘削方式 ライザー掘削方式
起工日:平成13年4月25日
進水式:平成14年1月18日
引渡し日:平成17年7月29日
「ちきゅう」の情報


「ちきゅう」は科学史上初めて巨大地震の震源まで堀り地震発生のメカニズム、生命の起源、及びさまざまな地球の謎を解明しようとする船です。

2005年7月、独立行政法人・海洋研究開発機構が約600億円をかけて建造。

今までの深海底科学掘削の世界記録は2,111mでした。
そこから先は人類はまだ未踏の地なのです。

海底下7,000mの世界!

今まで試験掘削を繰り返してきた「ちきゅう」がいよいよ8月から本格的な調査に乗り出します。

そんなすごい「ちきゅう」が

神戸にやってきました!

2006.6.11〜2006.6.14

 
「ちきゅう」後部から見たライザーパイプ。
掘削システムは、大口径の管(ライザーパイプ)の中にドリル管を通すに二重構造になっています。

そして掘削後の穴に、観測装置を設置します。

文部科学省は今年から東南海・南海地震の震源域の海底に海底監視、観測網を整備する予定で、 「ちきゅう」の観測データーと連携して南海、東海地震、またそれらの地震が連動する場合の 地震発生がどのようなものになるかの予測も可能になるかもしれません。

 
デリック


頂上部の滑車


さあ、「ちきゅう」はどんな風に地球を掘るのでしょう!



デリック

まず、目を引く高くそびえるやぐら。
これを「デリック」といいます。

海面からの高さは121m。
ここでパイプを継ぎ足して長い棒にしてから海底に送りだします。
効率よくパイプを組み立てて海底に下ろしていくためにこんなやぐらが必要になるのです。

頂上部には滑車が取り付けられ、波によって海底に向かって降ろしているパイプが動かないように その動きを吸収する装置が付けられています。

このデリックには「ちきゅう」の後部に積んでいる長さ38mのドリルパイプ(9.5mのパイプを4本連結したもの) を立てかけておくラックもあります。

 


パイプを運ぶクレーン



噴出防止装置
 (Blow-Out-Preventer:BOP)

掘削しているときに予期せぬ石油やガス、その他の物質が噴出するかもしれません。
そのときには火災などの大事故が起きるかもしれないのです。

その噴出を防ぐためにたくさんの安全弁をつけています。
上昇してくる泥水をモニターし、圧力上昇を感知したとき、すぐさまそれらの安全弁をとじて 噴出を防ぐという重要な装置です。

高さ14.5m、長さ5.9m、幅5.2m、重さ380トン。

この装置がド〜ンとまず海底に設置されるのです。


そして船とこの海底に設置された噴出防止装置とをつなぐのがライザーパイプです。
ライザーパイプは使われる場所によって形状が異なりますが、一般的なタイプでは 長さ27m、外径1.2m、重さは27トン。
この中を掘削するドリルパイプが通ります。

そして外側には噴出防止装置を制御するライン、油圧管が装備されています。




ライザーテンショナー

海中に伸びるライザーパイプを船上で支えるための装置です。
ライザーパイプの自重による変形等を防ぐために、船の上下の動きを吸収しながら ライザーパイプを一定の張力で引き上げます。
伸縮で動きを吸収するようになっているようです。

そしてこの下にぽっかりと海中に穴があいていて、この穴からライザーパイプ、ドリルパイプを 海中に降ろしていきます。
この穴のことをムーンプールと呼びます。
なんでもこの穴に月が写ったとか。(笑)
無骨な機械、装置ばかりの中で、この命名はいいですね♪
ムーンプールの大きさは長さ22m、幅12m。




パイプトランスファーシステム
船首や船尾に置かれている
パイプを運ぶ装置



クレーンでパイプ類を
デリックの下に運びます。




小さい粒がダイヤ!!!


ドリルビット

掘削をするドリルビットの一番先端はいろんなビットが使われます。
海底の地層の岩の固さに応じて使い分けます。
ビットの先端には、なんとダイヤが!

小さいダイヤは本物で、大きいのは人造ダイヤだそうです。
ダイヤってすごいですね。

掘削の仕組みは船と噴出防止装置をつなぐライザーパイプの中をドリルパイプが通ります。
そして船上から送られる泥水(マッド)がそのドリルパイプの中を通って下に送られ、掘削するときに出てくる 海底の削り屑と一緒に今度はライザーパイプとドリルパイプの間の隙間を通って船上に戻るのです。


汚水

その汚水(マッド)というのがこんなものです。

このマッドと一緒にあがってきた削り屑を分析し、掘削の状況を知ることができます。

この汚水がなかなかのすぐれもの。
特殊な液体のようです。

削り屑を搬送・排除するだけでなく、地層に応じて粘度や比重、化学組成を調整し、孔壁を崩壊しにくくする働きも持ちます。

ドリルパイプの先にドリルビットがとりつけられて掘削するのですが、ドリルビットの交換のために4,000mを引きあげるだけでも 約6時間もかかります。


 
救難艇
一番怖い事故が火災です。

突如噴きあがる石油やガスでの事故が一番恐ろしいです。

そのため救難艇は火災に耐えるように頑丈な作りになっています。


船位保持システム

船位保持システム

風、波、潮汐に流されることなく、船を海の上の一点に保つための装置

人工衛星によるGPS(全地球測位システム)即位、海底に設置したトランスポンダによる音響測位を 併用して位置を確認し、水平方向に360度回転する推進装置(アジマススラスタ)6基と サイドスラスタを駆動させてつねに「ちきゅう」を所定の位置、方位に自動的に保持することができます。

 

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